ドラマ、フラジャイルについて、もうちょっと書いてみます。

「フラジャイル」は、いいドラマだったと思います。
名作だとか、傑作だとかいう気はありません。
でも、多くの人が楽しめるドラマでありながら、今の医療について、命について、職業について考えるきっかけがあちこちにちりばめられた、良作だったと思います。

ドラマを見終わって一番に感じたのは、脚本の上手さ。
原作のエピソードやセリフを生かしながら、ドラマとして成立させるために原作のセリフや人物、展開を取捨選択しつつ、構成しなおしていました。
その再構成が上手い。
原作ファンの方には、原作通りじゃないとがっかりされた方もいるかと思いますが、漫画を全くその通りにやるのは不可能だし、それがドラマとして面白くなるかというと、そうでもなかったりするんです。
漫画の表現をリアルに人間がすると、結構うすら寒い感じになっちゃったり、うすっぺらく見えたり。
あと、登場人物を増やしすぎたり、それぞれの背景を書きすぎると、漫画ではOKでも、ドラマだとまとまりなく散漫になってしまったり。
フラジャイルは、脚本が原作の芯の部分をしっかり捉えて、それを表現すべく脚本化しているのを感じました。
橋本敦子さん、さすがだと思いました。

正直、第1話を見終わったときは、ちょっと大丈夫かな?って思いました。
演出の仕方もあって、とにかくカッコイイ岸先生=長瀬智也を映像化しようとしているように見えて…。
デザイン化したプレパラートの映像をバックにした長瀬君の目元のショットに盛り上がるBGMを重ねたり、藤原先生をやりこめるシーンでのカメラを360度ぐるっと回りこむように撮る派手な撮り方をしたり。
(この監督、最終回の岸先生の講演シーンでも360度回り込みしてましたから、この撮り方が好きなのかも。)
長瀬智也で、「ガリレオ」っぽいドラマを作ろうとしているのか?って思ってしまいました。
長瀬君の岸先生も、いまいちはまりが悪い感じ。
野村君の森井君がはまっている分、今一つな印象はぬぐえませんでした。
後日、後半を見た後、1話だけ見てみたら、1話はセリフのテンポが少し速いんです。
話が駆け足な分、セリフのテンポを速めて、間を詰めた感じがしました。
岸先生は、特に間が大切な人物だと思うので、そのあたりにもはまらなさを感じた一因があるように思います。
最初のころ、公式tweetが長瀬くんカッコイイばかりだったので、スタッフが長瀬君のかっこよさに目が眩んでそこをフューチャーしすぎているんじゃないかと疑ったり(笑)。

でも、2話でPVっぽい演出が控えられて、ガリレオっぽさが薄れたので、ちょっとほっとしました。
その後、だんだん岸先生に長瀬くんがはまってきた感じがして、5話に至っては、エピソードがよかったこともありますが、バチッとはまっていて、これが岸先生だ!と感じました。

岸先生、無表情ですが、微かな表情や、目線のやり方のひとつひとつに、岸先生らしい心の動きがほの見えて、繊細な演技がいいなと思いました。
長瀬君の演技も、脚本と同じく、原作の岸京一郎の芯の部分をしっかりつかんでいた気がします。
長瀬君に関してはもう一つ、漫画のシルエットがそのまま3次元化出来るようなスタイルの良さは、やっぱり、映像として無条件にかっこよく、絵になるんだなと実感。
キャラクターのかっこよさにより説得力が出ます(笑)。

中熊教授と細木先生は、原作と違う印象でしたが、人物的に奥行きのある描き方がされていて、これはこれでよかったと思います。
中熊教授の北大路さんは、さすがの存在感でした。
登場すると、ぐっと、ドラマが締まる感じがしました。

フラジャイルって、色々な見方のできるドラマだと思います。
医師不足、病理医の必要性とその置かれた厳しい状況、救命救急医のハードワークと診断の精度、患者と医師とのかかわり方、セカンドオピニオンの問題、画像診断医のこと、治験の問題などなど、現代医療の問題をちりばめるように描いているという意味では社会派風味です。
あと、5話で描かれていたお金と人生の選択の問題やラストのアミノ製薬の話も、社会派要素ですよね。
宮崎先生に注目すれば、宮崎先生の成長物語になっています。
岸先生と森井君の関係に注目すれば、一種のバディものっぽくもあります。
最初の頃の、診断までの過程は、推理ものっぽくもありました。

フラジャイル全体として見たときに特に強く感じたのは、職業人としてのプライドのあり方。
これは、岸先生とそれと対立する医者、また、森井君の進路問題にも関係していた気がします。
岸先生のプライドは、自分の仕事の完璧さに対するものだと思うのです。
100%を出すというプライド。
一方対立する医師たちが持っていたプライドは、自分の仕事に対するものではなく、自分という存在に対するプライド、根拠のない自尊心、つまりは自己愛によるプライドだったのでは。
そして、森井君は、自分が経済的な事情で医大を中退していることから、本来の希望とは違う検査技師という職業についています。
そのせいもあってか、森井君は物凄く優秀なのに自分の職業そのものにプライドをもてていなかったように感じます。
検査技師は、医者の下だって気持ちもあったようですし。
でも、ラストで岸先生のところに戻ることを決めたときの森井君は、検査技師として医師の下で働くという感覚ではなかったのではないでしょうか。
それぞれがそれそれの仕事を全うすることによって、確実な診断をだすという・・・。
医師のパートナーとしての検査技師になろうとしていたように感じます。
検査技師としてのプライドが森井君から伝わってきました。
考えてみれば、自分の希望する職種にだれもがつけるわけではありません。
そんな中での、仕事とプライドについて考えさせられました。

フラジャイルは、色々な引っ掛かりを持ったドラマだと思います。
どの部分に引っ掛かるかは、人によって違うでしょう。
ドラマはエンターティメントだから、面白いのは大切。
でも、ただ面白いだけじゃなく、いろんな問題提起をするドラマもあっていいのではないかと思います。
というか、そういうドラマがあってほしい。
もちろん、いろんなドラマがあっていいと思うのですけれど、問題提起をするドラマがなくなってしまったら、つまらないなと思うのです。
そればっかりになったら、それはまた嫌ですけど(笑)。

そういう意味でも、フラジャイルは、いいドラマだったと心から思います。
長瀬くんファンとしては、長瀬くんがこういうドラマに巡り合え、主演できてよかったなと思います。

以上、長々と失礼いたしました。
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